優れた経営者の話

土曜日は,ファイナンスのレポートと,ちょっとのアルゴリズムと,読書をしてました.3日くらい前に古本屋で見つけた本を読読.

巨象も踊る
巨象も踊る

巨象ってのはIBMのことです.頭でっかちで行動に移すのが苦手な超大企業をどうやって復活させたのか,当時のIBMのCEO,ルイス・ガースナー自身の手によって書かれています.

恥ずかしながら,IBMの滅亡危機についてはまったくほとんど知りませんでした.1993年と言えば私が10才の頃ですし,そのころは恐らくIBMという企業名すらピンとこなかったでしょう.大体アメリカ本国のIBMの話ですから,これが高校生だったとしてもちゃんとニュースを見ていたのか自信がありません.

ですが,そんな私でも読めました.これは完全なる実話に基づく本で,ある部分は「IBMを復活させようと頑張ってた日々の日記」ですが,別の多くの部分は「経営危機に陥った企業を復活させる方法論」について書かれています.ここで重要なのは,「大」企業に限った話ではないということです.つまり,一般的に,企業にとって良い戦略となりうる事項が書かれています.

こんなことを書いていると,私に起業意識があるのかと思われそうですが,少なくとも今後5年間はそのつもりはないし,その後もたぶんないでしょう.ですが,人間は集団の中で生きたいと思う一方で,強く独立,もしくは集団の中で権力を握ることを望んでいると思います.例外として,非常に良い指導者や集団に出会えた場合は,彼のもとで,その集団の中で生きていることを誇りに思えるだろうし,たぶん居心地が良いのではないかと思います.それが楽と言えば楽だし,他人を管理する必要がなく,割と自分のやりたいことに熱中できると思います.ですが,集団からの独立というのは起業と必ずしも一致せず,特に起業の目的の多くには,精神的なものに加えてカネというものがあります.カネはないよりあった方が良いに決まってるし,100より1000,1000より10000欲しいものです.起業すれば,もしかしたら大金持ちになれるかもしれません.ですが,基本的に私は,リスクのことを考えてしまうので,起業するのには消極的です.それ以前に自分が起業して成功するとはあまり思ってません.私はそういうタイプの人間ではないです.

話がそれすぎたので本の内容に戻りますが,何もこの本は企業の経営者だけ向けなわけではありません.1つには,凄まじいまでの堕落からどのようにして這い上がったのかという,サクセスストーリーがあります.これには経営者だけでなく,企業の一社員も勇気付けられると思います.最も単純な言葉で言えば,なせばなるというメッセージです.経営者だけでなく社員全員がなす必要があります.

もう1つには,IBMほどの大企業のCEOが,社員に対してこれほど強い思いを抱いているという事実です.私が無知なだけかもしれませんが,大企業のCEOや経営幹部は,社員に対して一方的でしかも懐疑的な思いしか抱いていないのではないかと思ってました.そのくせ結果を求めて,まったく社員の気持ちを分かっていないと.恐らくそれは,大企業のCEOを勤めるなら,冷徹に冷静に堅実に効率的に実行しなければならない,社員のことなど気にとめてはいないだろうという先入観を私が持っていたからだと思います.

事実は違います.ガースナーは社員に大きな期待を寄せ,それを行動で示し,チャンスを与え,士気を高めてきました.巨象はIBM,さらに言えばIBM社員のことです(もちろんIBMという企業自体の意味でもあります).大量のIBM社員をどうやって奮い立たせ,どうやってみんなをまとめて1つの目標に向かっていくのか,非常に難しいことだと思いますが,この本には細かく書かれています.そこから私は,単なる経営論ではなくて,ガースナーの会社に対する,また社員に対する深い愛情を感じました.優れた企業経営者というのは,優れた社員指導者でもあり,社員のことを思い,信じて,それを行動で示し,会社のために頑張らせることができます.これらの話は私にとって非常にポジティブなものだったし,こういった人のもとで働きたいと思う一方で,こういった経営者になりたいとも思います.

もちろん,優れた指導以外にも,象を踊らさせるために不可欠な要素が詳しく書かれています.しかしながら,正直申し上げて,よく分かりませんでした.えへへ.