アメリカGP・その後

早くも訴訟が起こってる模様.当然と言えば当然ですけど.結局7チームが罰金を払って収まるようですが,全く納得できませんね.

事の発端はミシュランのタイヤの安全性.アメリカGPが行われるインディアナポリスサーキットは,有名なインディ500が行われる楕円形のオーバルサーキットなんですが,F1でも最終コーナーはインディと同じオーバル区間を走ることになります.その最終コーナーが時速300キロ近いスピードで曲がってくコーナーなんですが,ミシュランタイヤはその部分の走行に問題を抱えているようで,金曜日にはトヨタラルフ・シューマッハがクラッシュ.正確な原因不明のまま,ミシュランユーザーの各チームに対して,警告だけが流れている状況でした.

その後,ミシュランはオフィシャルの声明の中で「我々のタイヤは10周しかもたない」とはっきり言ってまで,レース開催をFIAブリヂストンユーザ側に打診しました.この時点で何らかの対策をとる必要があったのですが,具体的に挙げられた対策は,1.最終コーナーにシケイン設置,2.ミシュランユーザーの各チームが最終コーナーで自主的にスローダウン,3.タイヤを変更してペナルティを与えてレース,といったものでした.

まず1についてですが,はっきりはしないものの,これについてはフェラーリのみが拒否をし,結果FIAも拒否をしたらしいです.現在のF1のレギュレーションでは,予選と決勝でコースレイアウトが変更された場合,そのレースはポイントが認められずノンチャンピオンシップレースとなります.フェラーリとしては当然,取れるはずのポイントを失うことになるし,FIAとしてもマーケティング等の関係上避けたいことだったと考えられます.

2に関しては,バトルをしているドライバーが自らブレーキを踏む可能性を考えると即却下.

3に関しても,急に変更されたタイヤが安全なのかどうか保障ができないので却下.もともと安全面から発生した問題なので,本末転倒もいいとこです.

結局適切な案が生まれないまま,レース開始時刻となり,ミシュラン勢はフォーメーションラップ後に全車リタイヤ.わざわざダミーグリッドについたのは,フォーメーションラップを走ることによりレース不参加とはならないので,ペナルティを避けることができると考えたからでしょう.実際にはミシュランユーザの各チームには,かなりのペナルティが与えられる模様です.

さて,この問題の原因は疑いの余地なくミシュランにあります.1つは攻めすぎたタイヤが安全性を欠いたこと.彼らが安全性を強調するなら,自らのタイヤ開発でもそうすべきでした.ブリヂストンには起こっていない問題ですから,完全にミシュランの技術的な問題で,これはすぐに改善できるはず.もう1つは2セット持ち込めるタイヤのうち,安全性を保障されたタイヤを持ち込んでいなかったこと.先と同じようなもんです.

ですから,史上最低のGPになったとはいえ,6台しか走らないということは十分に考えられるシチュエーションであって,安全性を最重視した結果だということもできます.問題はこっから.もっと良い方法はなかったのか.

この質問に答えるのは非常に難しいですが,考慮すべき点にFIAがあります.彼らはあまりに懐疑的で,こういった問題に柔軟に対応できず,レギュレーションを厳守することだけを考えているようです.F1をマネージメントする立場にあるからこそ,膨大なサラリーが支払われると同時に,F1を良い方向へと導く責任があります.今回のようなケースこそ,優れたリーダーシップを発揮することを誰もが望んだはずですが,残念ながら上手くいきませんでした.ルールを守ることは大切ですが,多少の妥協をしてもファンが十分に楽しめるなら,そっちの方がずっと良いはずですし,そんなことはすぐに分かります.結局ファンの目線でものが見れていないんです.今思うと,こうなる布石は前からあったようにも思います.

それなのに,いざアメリカGPが終わるとここぞとばかりに権力をはっきし,ペナルティを与えて問題を収束させようとしている.他にすることがないんでしょうか.なぜ最低のGPになったのかが分かっていないようです.ミシュランユーザが全車リタイヤしたからというよりも,FIAブリヂストンユーザ,ミシュランユーザの各チームが,全く連携がとれていないままレースが始まってしまったからです.そこにはリーダーシップが必要です.ただでさえ言いたいこと言いたい放題のF1なんですから,誰かがまとめなければなりません.今後に期待.

ちなみに,今回の件でフェラーリを責める声もあるようですが,各ドライバーやチーム監督も言っているように,ブリヂストンユーザには全く非がなく,彼らがポイントをとったりすることは当然の当然の当然のことです.もしそうでないとしたら,F1はただのサーカス芸になってしまいます.繰り返しになりますが,レギュレーションを守ることと,勇気ある妥協が必要だったはずです.