意識の科学

脳は空より広いか―「私」という現象を考える

脳は空より広いか―「私」という現象を考える

ノーベル賞科学者による「意識」という現象の入門書。脳神経とかの医学的な話は専門用語連発でよく分からないのだけど、仕組みは大変分かりやすい。簡潔な記述が多いのでゆっくり考えながら読んでるけど。

この本の要点は「神経ダーウィニズム」と「ダイナミック・コア仮説」。間違ってるかもしれんが以下にまとめてみる。

我々の行動はニューロンの活動によって制御されてるわけだけど、ニューロンの具体的な活動パターンは、個体によってかなり違う部分があるらしい。その多様性を説明するのが神経ダーウィニズム。これは、ニューロンの活動パターンのうち、その個体にとって有利となる行動を「たまたま」示したものが、自然選択されていくということを示す。要は、非常に短い期間で行われる自然淘汰。多様性を疑問点にせず、活動パターンの多様性は元々あるものとして認めたうえで、それらがある程度の一貫性をもつように自然に残ったという考え。まあこれはよく分かる。

問題はダイナミック・コア仮説で、これはよく分からん。ダイナミック・コアが説明するのは、意識というものが、ある時点では統一されたものでありながら、信じられないほど多様なのは何故か、ということ。意識の統一に関しては、例えば、我々は「赤」というものだけを感じることはできないし、「ペン」というものだけを感じることもできない。たぶん「赤いペン」というものだけを感じることもできなくて、赤いペンを持っている右手とか、ノートとか、机とか、さらに車のエンジン音とか、感覚器官から入ってくる膨大な情報を、全体として捉えている。こういうのは、ひとつの意識シーンと呼ばれる。さらに、「赤」とか「ペン」とか、そういった意識シーンの構成物はほとんど無限に考えられるから、我々が感じうる意識シーンの数はとんでもないことになっちゃうと。これは何故かと。これを説明するのが複雑系であるダイナミック・コア仮説なんだってさ。ふーん。もう一回読み直さないとダメだわ。

ひとことで言えば、多数のニューロンからなり、多数の自己言及を含む神経ネットワークのこと。自身の出力が自身への入力になってて、感覚器官からの信号に対して、ダイナミックに活動パターンを変化させる。

この本面白いんだけど、医者が訳を書いてて、所々すごい読みづらい。専門的で厳密なんだろうが、この本自体入門書的な扱いなんだからなぁ。読者に優しくしてくれえ。